ベランダの洗濯物を取り込もうとしたら、お隣の庭でよその猫と決闘中の次男亀之助を
発見!2匹とも激しく鳴いて威嚇し合っていた。
あぁ何をやってるんだ亀之助!どうしてもっと平和に生きて行けないんだ!
連れ戻しに行こうにもお隣は留守だ。オレまで不法侵入するわけにはいかない。そもそも
子供の喧嘩に親が出て行くのもいかがなものだ。でもほっとけない。これが自分ん家なら
モノでも投げて喧嘩を妨害できるのに。あぁこの距離がもどかしい。
しかたないから音を立てたり、名前を呼んだり、ご飯ですよ~と嘘をついたり、猫たちの気を引こうと色々やった。一瞬ちらりとこちらを見た猫たちに激しく手を振ったりもした。きゃーっカメさま~!!今日もそのグレーの毛並みがステキ~!
声は届いている。オレは必死だった。猫たちが血まみれになるのは嫌だった。とにかく必
死だったの。だから後悔はしてない。他に方法があったというなら誰か教えてほしい。
血迷ったオレが取った手段、それは3匹目の猫を演じることだった。
腹から声を出して、2匹よりも激しく鳴いて、雄雄しく鳴いて、途中から犬の遠吠えのようにもなってたけど威嚇し続けた。
何度も言うけど必死だったの。鬼気迫る演技だったと思う。
そう、あれは誓って演技だったの。
しばらくそうやってたら相手の猫がその場を立ち去った。長い闘いだった。
あーーよかった。安心して洗濯物を取り込んで戸を閉めようとしたら、お隣の戸がそっと
開いた。そして中からおじいさんの声がした。
「かめちゃん、お家にお帰りなさい」優しい声だった。ぎりぎり聞き取れる小さな声だった。
オレはひざから崩れ落ちた。あぁすべて聞かれていた・・留守だと思っていたのに・・
おじいさんごめんなさい・・わたしはあなたをも威嚇してしまったのですね・・
そのお隣さんとはあまり交流はない。今さら言い訳もできない。オレの奇行伝説がまた
一つ増えてしまった。オレは知っている。お年寄りの多いこのご近所でオレはひそかに
こう言われている。「若い・変わった・芸術家さん」。どれも微妙に違うと言いたい。